上手にためて、上手に使う

上手にためて、上手に使う

毎月の給料からためられる額とは? 子どもの教育費や老後の資金など、将来に向けて考えなければいけない貯蓄は、お金にまつわる悩みのひとつです。お金をためるために節約に励む人も多いはずですが、ときにはストレス発散のために、思いがけぬ出費をしてしまうことも。限られた収入を上手に仕分けして、日々の生活費を確保しつつ、将来の貯蓄や、旅行・趣味を楽しむためにはコツがあります。それは「習慣にする」こと。お金を使う・ためる習慣をつくるにはどうしたらいいのか、ファイナンシャルプランナーの二宮清子さんに教えてもらいます。


   

  

まずは「先取り貯蓄」の感覚を覚える

収入から毎月一定額を決めて貯蓄することが「先取り貯蓄」です。手取りが月2030万円であれば、うち1割が貯蓄にまわせる目安となります。ポイントになるのは金額ではなく「収入から毎月貯蓄をする」習慣を早いうちから身につけることです。

 

毎月の貯蓄額は家族構成により異なりますが、「少し肩の荷が重い金額」にすることもポイントになります。例えば、これまで23万円を貯蓄していたのであれば、プラス1万円。生活費に余裕をもたせず、貯蓄に余裕をもたせるのが目的で、「残ったお金でしか生活できない」ようにするため。つまり、少ない生活費でも暮らせることを習慣化させるための知恵です。

   

なぜ、貯蓄に余裕を持たせるのでしょう? 例えば、家族旅行が決まって代金を銀行から引き出すときを例に考えてみます。「必要なお金は7万円だけど、現地でなにかあったときを考えて10万円引き出そう」という経験はないでしょうか?もし余裕を持って引き出さず、旅行先で想定外の出費があったりすると、せっかくの楽しい家族旅行で“資金の余裕”がなくなってしまいますよね。貯蓄も同じことです。お金を上手に、そして楽しく使うためにも「先取り貯蓄」をしておきましょう。

   

この「先取り貯蓄」でためる目標額は、できれば200300万円あれば緊急時にも対応できるので安心ですが、難しければ最低でも100万円に設定すること。たった100万円と思うかもしれませんが、月4万円貯蓄していても25ヵ月必要なので、その間に限られたお金で生活することが習慣化します。そのうえ、実際に100万円という数字を通帳で見ると、「使うともったいない」気持ちが芽生えるもの。達成感を得ることで貯蓄をすることが楽しくなり、ひいては上手にお金を使うことに通じるでしょう。


   

節約だけではお金はたまらない!

貯蓄を考えると同時に、節約をはじめる人も多いかと思います。無駄に支払っていないか保険を見直す、長期のライフプランを考えて趣味を見直す、携帯電話のキャリアやプランを見直すなど、さまざまな手段を講じていると思いますが、ここで忘れてはいけないのは、“ついお金を使ってしまう”ということ。

  

例えば遊びに行った帰り、疲れたからと夕食は外食で済ましたり、家族や恋人・友人へのプレゼント、自分へのごほうびや日々の暮らしのプチぜいたくなど。これらも回数が多ければ、意外と高額になるもの。節約をしても結局お金がたまらないという人は、自分のお金の使い方を知り、いつ・どんなときにお金を使い過ぎるのか自分のくせを知り、見つめ直すことが先決です。

   

そして、“ついお金を使って”しまわないよう、解決策を用意しておくことも大事です。遊びに行った帰りに外食するのは、疲れて夕食を用意するのが面倒だからではないでしょうか?そうであれば、カレーやシチューなど温めるだけの食事を用意してから出かけるなど、原因を分析して対策を立てましょう。

   

また、秋は節約しやすいため夏のバカンスで出費した分をリカバリーしやすい時期です。まず、気温が穏やかなためエアコンやトイレの暖房便座スイッチを切ることができて、電気・ガス代を大幅に節約できます。夏の食事で定番のそうめんなどの乾麺やめんつゆが残っていたら、温麺や焼きうどんなどのアレンジメニューで使い切るのもひとつの方法です。

    

さらに、毎年夏に使う定番用品は翌年に備えて季節商品の最終セールをチェック。さらに衣替えで不要になった夏の衣類や、たんすの肥やしになっていたコートやセーターほか秋冬用の季節用品は高値で売却できる時期です。タイミングを見計らって行動することで、思いがけない収入が得られ、夏の出費をリカバリーできるかもしれません。



   

100万円をためたら「たまる仕組み」をつくる

毎月一定額を貯蓄にまわして、自分のお金の使い方のくせを把握し、節約してためたお金が100万円になったら、次のステップを考えましょう。次のステップとは、定期預金や学資保険、NISA、個人型確定拠出年金(iDeco)などで資産運用をすること。普通預金に入れている、いざというときに使えるお金ではなく、確実に手もとに残すお金になります。

   

できれば、この仕組みは早めにつくりたいもの。例えば、共働きで子どもがいる場合、小学校34年生になる前までにつくったほうがいいでしょう。それというのも、この学年は中学受験を考えはじめるころ。このあとは、塾や講習などがひかえているため、子どもの成長にともない出費が増す一方です。共働き家庭の場合は、できれば子供が幼いうちはご主人の収入だけで生活と貯蓄をして、奥様の収入は全額定期預金にまわすといいでしょう。そうやって“生活レベルを上げない”ことに慣れたほうが、たまりやすく、仕組みもつくりやすいでしょう。

   

なぜ、生活レベルを上げないほうがいいのかといえば、いちど上げてしまうとなかなか落とせないからです。とくにファミリーの場合は住まいにお金がかかりがちですが、人は「ちょっと身の丈より高い」住居に住みたがるもの。ここから支出を抑えなければいけません。

   

家賃は毎月固定とはいえ、光熱費や公共料金ですら月々の支払額が変わり、「使っていいお金」というのは意外と金額が定まりません。繰り返しになりますが、先に「ためるお金の金額」を決めることで、おのずと使えるお金が決まります。これを習慣化することで、はじめて貯蓄が増えるきっかけになり、たまる仕組みのステップにすすみやすくなるのです。

   

100万円を早くためるにはボーナスを全額貯蓄に回すという手段もあります。日々の生活費に補填しているという人は、“自分のくせ”を改めて把握しましょう。お金をためられる人は、ボーナスで日々の生活の補填をせず、子どもの教育費や家族旅行の資金、また自身のスキルアップのためなど将来に投資をしています。子供の成長とともに親が収入をあげていかなければ、いまの時代は教育費の捻出もなかなか難しいもの。貯蓄し続けるためにも、お金を使うときは「消費ではなく自分や家族のためになる」ことを優先しましょう。

    

二宮清子さん

家庭科教師時代に「家計管理」を生徒に教えていた経歴がありながら、主婦時代に赤字家計に転落した経験から「お金の大切さ」を痛感してファイナンシャルプランナーに。『ALL About』で家計簿・家計管理ガイドとしても活躍中。