教えます、簡単夏バテ防止法

教えます、簡単夏バテ防止法

猛暑、酷暑と言われ、年々過ごしにくくなっている日本の夏。そんなことから夏バテを起こす人も増えているようです。近年、命にかかわる熱中症が問題になっていますが、夏バテすると熱中症になるリスクも高まると言われています。本格的な夏を前に、夏バテの原因を知り暑さを元気に乗り切りましょう。そのノウハウを医学博士で健康科学アドバイザーとして執筆、講演、テレビ・ラジオ番組で活躍中の福田千晶さんに教えていただきました。

  

そもそも「夏バテ」って何? どうしてなるの?

近年の日本の夏は、最高気温が炎天下では40℃を超える地域も珍しくないほど熱帯化しています。猛暑日や熱帯夜も増え、炎天下の屋外とエアコンの効いた屋内での温度差が15℃以上になっていることもあるくらいです。さらにはゲリラ豪雨も増え、短時間で大量の雨が降った後は一気に気温が下がり、真夏でも肌寒く感じることがあります。このように極端な温度差に体がさらされると、体温を調節する度に体力を消耗してしまいます。

 

さらに冷たいものを飲み食いすることで胃腸が冷えて消化不良になったり、寝苦しくて眠れず疲れが残ったり。またエアコンの冷えから肩こりや頭痛になることもあります。

 

こうした症状が、いわゆる「夏バテ」なのです。

 

夏バテは誰にでも起こりうるものですが、中でも次のような人は夏バテ予備軍と言っていいでしょう。

冷え性な人…全身の血流が滞ると体のすみずみまで栄養や酸素が行き渡らず、パワー不足になります。

いつも寝不足な人…睡眠によって体力が回復できないため、疲れがどんどん溜まります。

胃腸が弱い人…消化不良が原因で栄養不足になりやすく、夏を乗り切るスタミナも不足しがちになります。

汗をかくのがヘタな人…体温調節がスムーズにできず、大汗をかいたり身体に熱がこもると、疲れやすくなります。

 

夏バテは体調不良の範疇です。夏バテをしていると熱中症も起こしやすくなります。熱中症になると、汗をかくことで体内の水分やミネラルのバランスが崩れたり、体温調節ができなくなり、めまいや立ちくらみ、頭痛、意識障害が起こります。これらの症状は炎天下や高温多湿の環境にいて起こることもありますが、夏バテしていて体力が失われていると室内で過ごしていても発症のリスクが高まり、場合によっては命の危険に関わることもあるのです。


    

「夏バテ」しないための生活の中でのポイント

まず気をつけたいのが、室内のエアコン設定温度。うだるような暑さの屋外から帰ってくると、すぐにエアコン温度を低めに設定してしまい、ついそのまま過ごしてしまいがちです。体が冷えると全身の血行が悪くなり、胃腸の働きも弱くなり食欲不振に。すると暑い夏を乗り切るパワーが不足して、夏バテになりやすくなります。

 

エアコンの温度は、室温が25℃から28℃ぐらいを目安にして調節しましょう。ただ部屋の環境やエアコンの性能によって、設定温度と人がいる場所の温度が異なる場合があります。部屋の目につくところに温度計を置いて、定期的に25℃から28℃ぐらいを保てるようにチェックしましょう。エアコンだけに頼りきると体が冷えやすくなるので、扇風機などを併用することをおすすめします。その際はエアコンの冷風を直接体に当てず、循環するように風向きなどを工夫しましょう。

 

暑くなるとつい冷えたジュースにビール、かき氷などを取りたくなります。冷たいものばかり摂取していると胃腸が冷えて消化機能が低下し、食欲不振や胃もたれ、胃痛、下痢や便秘の原因にもなります。冷えたドリンクなど、冷たいものを取るときは一気飲み、一気食いはしないようにしましょう。また夏場の食事は冷たいものばかりになりがちなので、温かいスープなど1食に1品は温かいものを食べるように心がけ、食事の最後も温かいお茶で締めるように。食べ終わりが冷たいと、胃腸の冷えはリセットされません。
 
 
 

 

冷たいものばかりを取るのはNGですが、夏場はこまめに水分を取る必要があります。その際おすすめなのは麦茶。ミネラル豊富でノンカフェインのため利尿作用もないので最適です。ほかには黒豆茶、ゴーヤ茶、そば茶、甜茶、杜仲茶、ルイボスティなどもいいでしょう。また水や麦茶に塩をひとつまみ溶かしたり、レモンをしぼったり、ハチミツをプラスすれば、簡単なスポーツドリンクの出来上がりです。

 

経口補水液もおすすめです。市販のものもありますが、自宅で簡単に作れます。目安は鍋などに湯冷まし1リットルにハチミツ40g(砂糖でも可、好みによって減らしても良い)と食塩3gを入れて良くかき混ぜます。そこにレモン果汁をひとしぼり入れ、冷めたら容器に移して、冷蔵庫に保存。ただし早めに飲み切るなど、衛生面には注意しましょう。

 

ところで入浴は湯船に浸かる派、それともシャワー派ですか。ただでさえ暑い夏だから、シャワーで簡単に済ませたい気持ちはわかります。ですがシャワーで済ませてばかりいると体温が上がらず、やがて汗をかけない体になり、暑さに対応できず、夏バテしやすくなるのです。そのため冷えのリセットにもなる入浴をおすすめします。

 

時間にゆとりがあるときは、半身浴もいいでしょう。湯温は38℃から40℃ぐらい。20分ぐらいじんわりと汗をかくまで浸かるといいでしょう。入浴のタイミングは就寝の2時間前ぐらいがベスト。ぬるめのお湯につかると副交感神経が優位になって心身ともにリラックス状態となり、安眠できます。

 
 

「夏バテ」しないための身体づくり

暑い夏を乗り切るには、焼き肉やうなぎなどのスタミナ食が一番と思っていませんか。でもミネラルや食物繊維を多く含む野菜が不足すると、スタミナ食は体の中でうまくエネルギーに交換されません。むしろ、代謝が悪くなることもあります。夏バテしない身体を作るためには、毎日いろいろな食材をまんべんなく食べること。ポイントは食材の色を「赤」「黄」「黒」「緑」「白」の5色に分けて、この5色を意識して食べるようにすることです。栄養素もバランス良く取れます。特に食欲が落ちる夏場は、普段以上に食卓の彩りには気を配るといいでしょう。

 

また味付けに関して、「甘味」「酸味」「苦味」「塩味」「辛味」の5つ、調理法は「生」「焼く」「煮る」「揚げる」「蒸す」の5つがあります。この55法を偏りなくローテンションさせて食べるようにすると、カロリーの摂りすぎも防げます。

 

夏場でも体づくりのためスポーツは欠かせませんが、冬場と同じペースで運動するとバテてしまいます。夏はハードすぎずマイペースに続けられる運動を行うようにしましょう。

 

ウォーキングやサイクリング…早朝や夕方など比較的涼しい時間帯に。木陰の多い並木道や風通しのいい川沿いの道などがおすすめです。基礎的な体力をつけることで夏バテしにくい体をつくりましょう。

水泳…水中を歩くだけでも効果的に体力づくりができます。屋内プールが理想的です。

フラダンス…音楽に合わせてゆったり動くと、リラックス効果も期待できます。

ラジオ体操やヨガ…体のすべての筋肉をまんべんなく短時間で効率的に動かせます。

 

食事と運動、そして生活習慣に気をつけて暑い夏を乗り切りましょう!

福田千晶さん

医師としての診療、産業医業務に加えて、医学博士・健康科学アドバイザーと
して執筆や講演でも活動中。著書や監修書も多数。