賃貸と分譲。住むならどっちがおトク?

賃貸と分譲。住むならどっちがおトク?

家の購入は人生でもっとも大きい買い物です。それだけに、どこに買うのか、広さや間取りはもちろんのこと、頭金やローン返済というお金に関することまで、多くのことを考えなければいけません。一方で、毎月の家賃を支払うだけの賃貸は住み替えが気軽で初期投資が少ない分、老後の資産にならないというマイナス面も。生活の礎となる家は、どんな視点をもって選べばいいのでしょう? そこで、今回は賃貸と分譲のメリット・デメリットをファイナンシャルプランナーの二宮清子さんに教えていただきます。


 

賃貸マンションのメリット・デメリット

賃貸マンションには分譲タイプと賃貸タイプがあります。ここでは賃貸タイプを例にして、お話していきたいと思います。まず、最大のメリットは「住み替えしやすく、ライフスタイルの変化に柔軟に対応できる」ことです。初期投資も引っ越し費用くらいのため、家賃以外のランニングコストは不要です。

一方でデメリットは、「資産として残せない」ことと「高齢になり家賃を支払い続けるのが困難になった場合、転居が難しい」という2点が挙げられます。

そして、賃貸と分譲の話になると必ず質問されるのが、住み続けた場合にどちらが安いかということです。これの答えは、「80歳を過ぎると賃貸のほうが高くなる」が正解です。

 理由は、当初の賃貸のメリットがなくなるためです。例えば、いずれ実家に戻ることが決まっていたり、シニア向け住宅を購入することを決めていたりと、老後の住まいがあるならば分譲より賃貸のほうがおトクです。このような理由がなければ、80歳を分岐点に「おトクではなくなるのが賃貸マンション」ということになります。


 

分譲マンションのメリット・デメリット

分譲マンションは、比較的立地条件がいい場所に建っているので、スーパーマーケットや銀行など生活に必須の施設が近いという「生活環境に優れている」ことが、まずメリットとして挙げられます。建物の構造がしっかりしていて、共用施設が充実し、また防犯対策されている物件もあるなど、安心感があるのも分譲マンションの特長でしょう。

なんといっても、「資産として残る」「ローン完済後は負債がない」「賃貸に貸し出したり、売却したりしやすい」という3点が、最大のメリットといえます。これに加えて、購入できた事実があるので精神的満足度を得られるだけでなく、社会生活を営むうえで「社会的信用が得られる」のも見逃せないところです。

また、意外かもしれませんが、分譲マンションは「光熱費が安い」のもメリットです。堅牢な構造なので気密性が高く、最近の建物であれば省エネ仕様の設備が備えつけられていることも多いからです。

一方でデメリットといえば、住み替えしにくいためライフスタイルの変化に対応しにくいこと。さらに、頭金という初期投資以外にも、固定資産税、管理費、火災保険や地震保険などランニングコストがかかります。途中で管理規約が変更になり、大規模修繕のために管理費が値上がりするなど思いがけない出費を強いられる場合もあるでしょう。

そうはいっても、やはり「資産として残る」ことが最大のメリットである分譲マンションは、年齢による不利益をこうむることもありません。「住み続ける」点を鑑みると、分譲マンションはメリットのほうが大きいでしょう。


 

本当におトクな分譲マンションとは?

マンションを購入するなら、「立地条件のいい」「分譲の中古マンション」がもっともおすすめです。理想は築浅の物件。1981年に建築基準法が改正されているので、1983年以降に建てられている物件であれば耐震性も問題ないでしょう。

せっかく分譲マンションを買うなら、新築がいいと考える方も多いかもしれません。ただ、新築物件はプレミア性が価格に加算されているため、初期投資がかさみます。その点、中古物件は初期投資がおさえられているうえに、下調べができることが利点になります。

というのも、集合住宅にはご近所トラブルがつきもの。新築物件に比べて中古物件は、事前に住民の質を調べることが可能です。住民のコミュニティが円滑かどうかや、ほかに修繕費や管理費の滞納がないのかも確認できるでしょう。

そんな中古マンションの分譲ですが、購入するときは次の3つのポイントに注意して選べば、よりおトクになるはずです。

ポイント①立地

スーパーマーケットや銀行、公共交通機関からのアクセスがいいなど「生活がしやすい環境」であることは絶対条件です。ファミリーであれば、学校までの距離も考えましょう。なぜなら、思いがけない転勤や急に実家に戻ることになった場合、賃貸に出したり売却しやすいからです。マンションは「資産」なので、現金化しやすいことが最低限の条件になります。

 

ポイント②外観がすてきな物件

せっかく買うなら、見た目や雰囲気が自分好みなほうが気持ちよく住み続けられるはずです。住みはじめれば子どもや地域のつながりができ、同じマンションの住民以外とのおつきあいもはじまるでしょう。知っている人にマンションを見られて「すてきなマンションに住んでますね」と言われたほうが、気分がいいはずです。ただ、外観がいまいちでも、構造が堅牢な物件もあるので好みは分かれるところでしょう。

 

ポイント③東南角部屋高層階

住居は日当たりも重要です。西日より朝日が喜ばれるので、南向きであれば西より東向きがいいでしょう。集合住宅は音の問題がつきものなので、そこを考慮して角部屋を。高層階を好むか否かは個人によりますが、価値観は資産には反映されません。賃貸に出すことや売却を考慮すると、高層階がいいでしょう。

最後に、住宅購入につきものの住宅ローンの話です。セオリーは「総額の2割は頭金で支払う」ことです。中古は購入も売買も価格は大きく変わりませんが、新築の場合、中古になると価値が一気に下落するので、築10年ほどで売却すると残ったローンがそのまま多額の借金になるので注意しましょう。


 

二宮清子さん

家庭科教師時代に「家計管理」を生徒に教えていた経歴がありながら、主婦時代に赤字家計に転落した経験から「お金の大切さ」を痛感してファイナンシャルプランナーに。『ALL About』で家計簿・家計管理ガイドとしても活躍中。